NoName

Open App

目が覚めると君が泣いていた。
フラレた〜、なんて言いつつ笑って酒の入ったビニール袋を下げて僕の家に押しかけてきた、君が。
泣いている顔なんて、見たくない。でも、朝の光をきらきらと跳ね返す雫が、美しいと思ってしまって。
声を抑えるように泣く君に、手を伸ばしかけた。でも出来なかった。僕が寝ている時に泣いていたんだから、そういう事なんだろう。
僕も君も臆病者だ。君はもっと僕を頼っても良いのに。僕は一言、僕にしなよ、と言えたら。
君の小さな小さな息を隠すように数回、鳥が朝を知らせた。
やがて君は寝転んだ僕を揺すって、起きてよと明るい声で話しかけてくる。いつも通りのような、ほんの少し、震えているような。
それでもやっぱり臆病な僕は、何も無かったかのようにおはよう、と言うことしかできなかった。


(朝、目が覚めたら泣いていた)

7/10/2022, 2:54:59 PM