Theme;落下
アラームが鳴る前に、私は汗をびっしょりかいて目を覚ました。
しばらく大きく息をついていると、ようやく冷静になってきた。
まただ。またこの夢だ。
最近いつも見る夢。深い深い縦穴をどこまでもどこまでも落下する夢だ。
この夢のおかげで、私はこのところ寝不足だった。
夢占いでは、落ちる夢は凶夢とされることが多いという。
精神の不安定さを暗示していたり、困窮や事故などの急激な没落への警告だったりと解釈されるらしい。
そうは言われても、不慮の事故だったら何の対策もできないではないか。
夢占いを全面的に信じているわけではないが、それでも不安ばかりが募っていく。
いつ事故が起きるのだろう。
それとも急病だろうか。
不安で満足に眠れず、浅い眠りのなかで落下を繰り返す。
私の精神はだんだんと疲弊していった。
また深夜に目を覚ましてしまった私は、少し汗を流すことにした。
ランニングシューズを履いて、寝静まった街を走る。
落下中の奇妙な浮遊感がまだ身体にまとわりついている気がして、それを振り払うように走る。
…そうやって周囲が逸れた次の瞬間、衝撃を感じると同時に私の身体は宙を舞っていた。
ああ。これが夢の暗示だったのだろうか。
しかし、あんな夢を見なければこんなことにはならなかったのではないだろうか。
どちらが正しいのかわからないまま、車にぶつかって跳ね上がった私の身体は、覚えのある浮遊感に包まれていった。
6/18/2024, 11:36:05 PM