クライネガ

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最初から決まってた

人生って最初から最後まで決まってるんだって路地の土手に座ってるばっちゃが言ってた。
歯の抜けた間抜けな顔の見た目でとても愉快なばっちゃがニヤリとして言った。
てか誰?

「今こうしてオマエに会ったのも決まっているのさ。」

決まってるって誰が決めたの?

「それはこの世に生を授かった時から既に脳にある程度決められてプログラムされてるのさ…ひゃっひゃっひゃ」

何言ってるの?そんな事倫理的に許されないよ。人の人生を決めるなんて。

「その倫理ってものは誰が決めたのかね?結局はそれも誰かが決めたルールで合ってそんなもんは元より存在しないさ。」

てか誰?
私は何にも反論する事は出来なかった。
ばっちゃはそれを見てニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべた。

「ちなみに…そのプログラムを作ったのはワタシさ」

信じられないよ。そんな凄いものを作った人がなんでこんなとこにいんのさ?

「ひゃっひゃっひゃ。それもまた決められた筋書きさ。ワタシがこのプログラムを作る前からこれは観測出来てあっていずれくる事さ。」

意味が分からないよ。
そしたら僕の将来も分かるの?だって作ったんだろ?

「分かるよ。それなら話してやってもいいさ。でも未来を知るって事は今後何が起ころうとオマエは笑う事も、怒ることも、泣く事も出来ないぞ?」

ばっちゃに分かるわけないだろ?てかそんな事仮に合っても分かったらそれを未然に回避出来るし未来予知で友達に自慢できるじゃん。

「そんなら話しちゃうよ?これからオマエに起こることはな?」

そっからばっちゃの話は続いた。それはまるで1つの映画を見ているようだった。だが映画にも終わりはくる。数時間後にはばっちゃの話は終わった。

「これでオマエの人生は終わるさ。どうだい?もうこれでオマエはこの先の人生は決まったのさ。」

なんだ。私の人生普通じゃないか。まあこれで僕はもうこの先起こることは分かるからなんとでも出来るけどね。

「いい忘れてたが、オマエがどんなに変えようとしてもその先またどこかで修正が入るのさ。最初からすべて決められてるから。」

いいよ。やってやるよ。変えてやるさ。
そして僕は路地から出た。

「ま、オマエがワタシの話を聞くのは分かっていたがな。」

その後の人生は聞いた通りに順風満帆だった。
途中都合の悪い出来事は何とか変えようとした。
だがそれも次第に上手くはいかなくなってきた。
なんで?なんで?僕はこんな事してるんだ?
何故抗おうとしてるんだっけ?だってどうせ決まってるは分かってる。それにどう変えようと上手くいかない。
決められた大学に行き、決められた彼女が出来、決められたように彼女は浮気して、決められた会社に就職し、決められた女性と結婚し子供は産まれ、会社では大きな仕事を頼まれ成功し、3年後にはミスが発覚しクビになる。
最初は何度も抗おうとした。でも無理だった。その度に途中で修正がかかり上手くいかない。
僕はもう考えるのをやめ今日も決められたプログラムを実行するロボになる。もしあの時聞かなければ人生もまた違って見えたのかな?

「すべては決められていた。」

8/7/2024, 1:34:22 PM