「後悔」
「人生何が起こるかわからないから、蓄えは必要」
そう信じて、俺は働き出してからずっと、稼ぎの大部分を貯金や投資に回してきた。
とはいえ本来の俺は誘惑に弱く、大学を卒業するまではアルバイトで稼いだお金やお小遣いの類は全て使い切って過ごしてきた。誘われると断れない性質でもあった。
就職するにあたってお金を貯めると決めたとき、一度誘いに乗るとずるずると何度も誘いに乗ってしまうことは目に見えていたので、俺はすべての誘いを断ることにした。
お金を全部使い切っていた時には意識していなかったが、1回の飲み会にかかる費用は意外と高い。面白いようにお金は貯まっていった。
目標にしていた金額を達成したとき、俺の年齢は40をとうに過ぎていた。これからは思う存分遊べるぞと思ったものの、見渡すと周りに誰も友だちはいなくなっていた。当たり前だ。全ての誘いを断っていたのだから。
0が並んだ通帳を見て、俺の欲しかったものはこれじゃないよな、とため息をついた。
5/15/2024, 9:24:51 PM