この世界は不公平だ。
運のいいやつはやさしい両親兄弟のところに生まれ、愛情に恵まれてしあわせな人生を送ると、そう決まっている。悩み事ができたって、いやなことがあっても、必ず誰かが助けてくれる。
お綺麗な苦しみ、あっさり終わった悲しみを、私も辛いことあったよ、頑張ったんだだよと胸を張って話す。
殺してやりたい。
今すぐわたしの苦しみを突きつけて、ほら、頑張れ、辛くても頑張れるんでしょと焚きつけてやりたい。
そんなことをずっと考えていたからか。目の前に現れた異形は清らかな微笑みを口元に浮かべて、それはそれはやさしくあなたの願いを叶えてあげましょうと言った。
わたしの願い?
そんなの決まってる。わたしより幸福なやつを不幸にして欲しい。泣いたってどうにもならないことを、誰も助けてくれないことを、自分が原因じゃない不幸がどれほど重くて、もがきたくてももがけないことを知って欲しい。
あら、あなた、そんなことでいいの?
いいの。だってこう考えちゃうもん。わかってるよ、わたしだけが不幸じゃない。わたしより苦しいひとはいる。でも、ほんとうにそうなのかなって。みんな不幸で悲しくて苦しいと思うけど、どこか、ほんの一部分はわたしよりしあわせなんじゃない?
だから、この願いを叶えて欲しい。違ってたら、それはそれでいいよ。あってても、それはそれでいいよ。
だから、お願い。
異形は呆れた顔で指を振ると消えた。
目を閉じて、しばらく待ってみる。目を開ける。窓ガラスから見る世界は何もか変わって内容に見えた。
わたしは靴を履いて外に出た。友人に会って泣いていないか確認するために。
1/15/2026, 3:34:53 PM