雷鳥໒꒱·̩͙. ゚

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―私の日記帳―

白い布のカバーがかかった日記帳
最後に見たのは何時だったか、
それすら思い出せなかったが、
それはカッターか何かで乱暴に切ったような跡、
何本かの釘に刺されて、開くことが出来ない
釘を抜いてみても、
各ページに糊がこびりついていて
やはり開くことが出来なかった
見るからにズタボロで、
きっとなにかあったんだろう
そう誰もが思うくらい、酷い有様だった

“された”んじゃない
“やった”んだ
他人の日記帳だという訳でもない
表紙に自分の名前も書いてある通り、
紛れもなく私の日記帳だ

動機なんて鮮明に覚えている
…ただ、羨ましかったんだ
他の誰でもない、自分が
それも、過去の自分が
押し入れから日記帳を見つけ、
それを読んでみたときがあった
私は怒り狂った
将来、どんな不幸を背負うかも知らずに
お気楽に遊んでいた多幸な自分に

そんなに余裕があるなら
せめて未来の自分に何か残せよ
日記帳とかそんなものじゃなくて
未来の自分も自分自身だろ
自分のために、できることがあっただろ
何度も何度も選択を誤るなよ

こんな幸せが詰まった日記帳なんて
視界に入るだけで嫌気が差す
いつかこの日記帳を忘れた日が来たとして、
未来の自分が同じことにならないようにと、
あの日の私は怒りに任せて日記帳を封じたんだ

そのときの怒りはもう消えていた
記憶と共に蒸発したみたいだ
…今の自分なら、過去の幸せな自分を見ても
何も思わないだろうか
ふとそう思った私は、カッターで糊の部分を切って
日記帳を開いた

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8/26/2023, 10:29:31 AM