【閉ざされた日記】
どうにも気分が乗ったのだ。
学生時代、テスト直前になると何故か部屋の掃除をしたくなるあれだ。
今、私の目の前にあるのは1冊のノート。
なんの変哲もない……事もない。
何故なら開くはずの側面にはガムテープが貼られているからだ。
「なんだったかな…」
この部屋にあるという事は自分の物なのだろう。
興味本位。
怖いもの見たさ。
この際どちらでもいいだろう。
表面がガムテープに持っていかれないようにゆっくりと。
ただの紙面であるノートにそれを求めるのも無理な話だろう。
ガムテープと一緒に剥がれてしまった表紙を、まぁ仕方ないかと中身がなんでもない物である事を祈る。
「……ぁあ、そっか……これか…。」
開いたページには、最近ではめっきり使わなくなったシャープペンで書かれた、擦れて薄くなった言葉が並んでいた。
反抗期とも言われる時代だっただろうか。
何かわからない焦燥に駆られ、
何かわからない不安に押し潰され、
何かわからない苛立ちに振り回され、
わけも無く死に憧れた。
そんな死にたがりの過去の自分。
嬉しいとは何だ。
楽しいとは何だ。
美味しいとは何だ。
幸せとは何だ。
愛とは何だ。
今日、このタイミングで見つける事が出来てよかったのかもしれない。
嬉しいと暖かい。
楽しいと心が弾む。
美味しいと優しくなれる。
幸せだと一歩踏み出せる。
愛しいと泣きたくなる。
あの時の私を、今の私なら抱きしめられる。
この時の私が、今の私に繋がっている。
ありがとう。
気分が乗ったまた何年後かに、再び開こう。
苦くても、忘れちゃいけない時間だったと思うから。
「それまで、またね」
1/18/2024, 12:13:22 PM