霧つゆ

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 母の口癖は

 「貴方はいつまでも私の子供なのよ。」

 だ。歩いているときも、私が車を認知しているのに

 「車が来てるから気をつけて。」

 と言う。正直、分かっていることに対して言われるのがムカついた。私だって大人だ。そのくらい一人でも分かるし行動できる。

 「わかってるから、いちいち言わないで。」

 そういうと、母は

 「しょうがないじゃない。貴方はいつまでも子供なんだから。」

 と笑った。変わらない姿勢に苛立ちを込めて、また前を向いて歩き出した。
 私が、母をこんな風に思っているのは昔からじゃなかった。昔は、逆に心配してほしかったくらいだった。
 母は、恋多き人だった。血の繋がった父、前の父、そして今の父。その間にも彼氏が何人かいた。どんなに男に裏切られても、ひたすら別の男へと向かい、恋をしていた印象が強い。だからこそ、意識が男の方へと向きがちで、幼い頃は、結構放置をされていた。
 母は、土日は家におらず、彼氏の家でゆっくりしていた。平日は、祖父母の家に預けられ、家に帰っても母は常に彼氏と電話を繋いだり、メールのやり取りをずっとしていた。

 「母さん、あのね。」

 そう言うと

 「はいはい、よかったね。」

 それだけ。空返事をされ、私はそれ以来学校の事も基本的には話さなかった。
 学校からの保護者へ渡す、子供の生活態度の紙に【自宅で、学校のことを話すかどうか】という内容の質問に対して【話さない。】と書いていた。話さないじゃない。話しても意味がない。と、反論したかったが、どうせ聞いてくれないから辞めようと、口をつむんだ。

 こんな風に生きた幼少期だからこそ、今更子供扱いされても嬉しくはないし、なんで今更。という気持ちが強かった。
 私を、子供のままで居させてくれなかったのは、貴方だ。

No.16 _子供のままで_ ノンフィクション

5/13/2024, 4:17:53 AM