始まりはいつも
古めかしい電柱の隅っこには、2つのタンポポが
生えていました。
…いえ、「二人」と言ったほうがいいのかもしれません
「おいおまえ!俺にションベンかけるんじゃねぇ!!!」
「まぁまぁ兄さん。犬に言ってもしょうがない
でしよう。」
「いいや!あいつは毎日毎日来るんだよ!
ほんとうんざりだぜ…。」
二人のタンポポは驚くことに自我を持っていました。
性別は…たぶん「花」でしょう。
「うぅ…おっさんってなんでこんなところで
吐くのかねぇ…」
「お酒にでも酔ってたんじゃないですか?」
「にしてもだよ!俺らのことも少しは
考えろってんだ!」
「…タンポポに自我があるなんて思う人は
なかなか いないんじゃないんですかね…?」
「…。」
「それに兄さん、昨日は
おっさんのゲロは俺らの貴重な栄養分だ!
なんて言ってませんでしたっけ?」
「……うるせぇ!」
こんな会話をしたり…
またある日は、
「兄さん、そろそろ春も来てお別れじゃないですか?」
「なんでそうなるんだよ。」
「ほら、僕たち綿毛になって飛んで…」
「バカヤロ!俺らは次の人生も一緒なんだよ!!」
「えぇ~…僕また兄さんと一緒なんですか」
「なんだよぉ。嫌なのかよぉ??」
「…圧がすごいです兄さん。」
こんな喧嘩(?)をしたりしていました。
そしてお互い綿毛になり、宙を舞い、
次の人生も一緒に過ごすことになったのです。
「これから一年よろしゅうなぁ!」
「なに言ってんですか…兄さん。
僕たちとっくに知り合いでしょう?」
その後も奇跡のように二人は同じ地にたどり着き、
一緒に生きていくのでした。
皆さんも道端で二人のタンポポを見つけたら
…写真でも撮ってあげてください。
きっと喜ぶでしょう。
―新しい人生の始まりはいつもあなたと―
10/20/2023, 12:27:05 PM