創作 【閉ざされた日記】
「ねぇ知ってる?北極と南極では南極の方が寒いんだよ。」
小学生の頃の帰り道、あの子は私にそう言っていた。
「えっうそ、北極の方が寒いんじゃないの!?北ってついてるし」
愚かな私はそう返した。
それからその子から説明を聞いた。物知りだったあの子。中学受験して今はもう連絡先すら知らないあの子。
その子と過ごした帰り道の6年間は、私にとって人生で1番楽しかった瞬間なのかもしれない。
そうして月日が経ち、引きこもりになってしまった高校生の今の私。
朝が来て、夜が来て、また朝が来て、夜が戻ってくる。
朝が夜を殺しているのか、夜が朝を生かしているのか。そんなものは分からないから見て見ぬ振りをしている。
下校時刻になったら先生にバレないようにランドセルの奥の方にしまっていたぐちゃぐちゃになった1冊のノート。
「交換日記」のマジックペンで書いた下手なイタい文字が目に染みた。
私はいつも下手な字で「好きな人ができた」とか「お母さんとけんかした」とか書いてその子に渡していた。
その子は進学塾で一生懸命受験勉強していて時間がなかったはずなのに、いつも丁寧に私の日記の欄にコメントをくれていた。
そうして私達は小学生時代を過ごし、私は公立の中学校に進み、あの子は有名な私立中学に行ってしまった。
「あの子がいつも学年1位を取っていた、」と噂で聞いた。
私はそれを聞いて驚いた。私は出来ない子なのにな。本当にすごいな。あの子は昔から凄かったもんな。
駅前の進学塾、私立中学校。私にはとても眩しいもので、もう私達の間には隔たりが出来ていた。
閉ざされた日記。もう私達が交わすことのない日記。もう
文字を通じて交わることのない私達。
そうして私はいつでもあの子との日々を思い返すであろう。
あの子と過ごした帰り道が私にとって1番人生で楽しかった瞬間なのかもしれない。
1/19/2026, 7:03:25 AM