※BL描写
肩に気安く触れてくる大きな手は、振り向かずとも誰のものか分かった。手はそのまま無遠慮に胸元まで降りてきて、がっしりとした胸板に抱き寄せられる。
背中に伝わる温もりに、心臓がどきりと跳ねた。それに目を背けながら、いやいやをするように小さく身を捩ってみせる。
「ハグ、嫌いっすか?」
振り向いてみると、尋ねる言葉とは裏腹に、幼げな顔立ちにはニコニコと嬉しそうに笑みが見られた。
肩に顎を載せてくるせいで、吐息が混じってしまいそうなほどに距離が近くなっている。唇が重なる状況を連想してしまい、頬が熱くなる。
「ね、こっち向いて」
一向に返事をしないこちらに焦れているのか、肩に額をぐりぐりと押し付けながら甘えた声を出す。滑らかな彼の頬が首筋に触れるけれど、その柔らかさにも気付かないふりをした。
「向かへん」
そう呟いて、胸元に回されている大きな手を両手で包み込んだ。彼はお願いを聞いてもらえなかったのに、筋の通った鼻を子犬のようにすり寄せて、なお一層こちらを抱きしめる腕の力を強めた。
12/11/2023, 3:12:50 PM