もう音が鈍くなってきた
唯一の目もぼやけてもう、光が見えない
せめて、せめて何かしたかった。
君の為に。 君たちの為に。
最期まで、先生として。
心の灯火が、命の光が、消える前に。
ならこの子達を囲ってしまえば、助かるんじゃないか。
せめて、この子達だけでも。
「先生、大丈夫だよね、先生、?」
怯えた目で、自分の瞳を覗き込む君が居た。
「うん、大丈夫だよ。だから、」だから。
今は、静かに眠りな。
君は瞳を手で覆って仕舞えばあっという間に深く眠りについた。
「大丈夫、大丈夫だよ。先生が守るからね。」
例え片腕が無くなろうとも。
例え片目が見えなくなろうとも。
君達に何かを失わせる方が僕としては怖かったんだ。
だから最期のわがままだよ。
「長生きするんだよ。君達は僕の自慢の生徒なんだから。」
色んな人に出会って、色んなものに触れて。
沢山の幸せを受け取って必ず誰かに看取られる事。
僕のように1人で死ぬような事にはならない事。
後悔をしないように動けるうちに動く勇気をもって動く事。 絶対に、何よりも命を優先すること。
ホントのほんとに最期の先生との約束だよ。
「馬鹿だよなぁ〜先生。」
「ホント。それ以外何も言えないくらい馬鹿。」
「でもまあ、この人はそーゆー人だから。」
「それはそーだけどさぁ、それで片付けれるくらい、簡単な人ではないよな。」
「まあね。 ほら、早く行こう。今日は噂のアイツが退院するらしいじゃん。」
「あ!!!そっか!!!昨日寝れんかったくらいなのに忘れてたなんでだろ、先生今日だ!!!」
「とりあえず消化に良さそうな煎餅持ってってやろう。」
「いやそれ絶対逆。なんなら硬いやん歯痛いやん。」
「それはそう。早く行こう。」
「ん。行こっか!」
先生は馬鹿だから、自慢の生徒である俺が教えてあげるけど、あの時俺眠りきって無かったよ。ちゃんと約束も守るよ。だから先生も、その隣にちゃんと立っててね。
9/2/2023, 3:06:56 PM