【ジャングルジム】#55
鉄が格子状に交わった先には
夕日が見えていた。
子供たちがそれに登っては降りて
靴の裏にある土がへばりついた。
突然の狐の嫁入りであった。
それは子供たちにも分かるようで
その場にいる人全てが空に視線を向けた。
しかしそれは雨よりもずっと重く
憂鬱に感じさせるものであって
足早に家へと帰る者は少なくなかった。
私は何者かに指示でもされたかのように
足が動き始めて家への帰り道を歩んでいる。
後ろを振り向こうとするが
してはいけない気がしてならなかった。
ふと思う。
住宅街なのにも関わらず
人が誰一人として居ないことを。
全身の力が一気に抜けて膝から崩れ落ちた。
歩道のコンクリートは雨に濡れた土のように
柔らかく今にも足が持っていかれそうで
恐ろしいものを感じさせた。
一つ、目の前に灯りが見えた。
それは半透明な青色で見た目は人魂である。
「何か下さりませぬか?」
そう問われたように聞こえなくも無かったが
もう一度聞き返そうとした。
「はい?」
身体は急激に凹み
呼吸も不可能であって
視界からは暗闇が見えるのみであった。
夕暮れ時の天気雨に出る人魂に
何か話かけられようとも無視するのが吉だ。
きっと奴らは耳が悪い。
9/24/2023, 3:33:50 AM