たやは

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世界に1つだけ

君に始めて会ったのは僕が大学3年で君が2年の時だ。同じサークルに所属する仲間として知り合い、君の笑顔や仕草に惹かれていくのに時間はかからなかった。僕から「付き合って欲しい」とお願いした時、君ははにかみながら小さく頷いた。

あれから5年、僕たちも結婚し子供が1人いる。可愛くて可愛く仕方がない娘だ。
このままの幸せがずっと続くと思っていたのに神様は本当に意地悪をする。

君は調子が悪そうだった。息が辛そうで、顔色も悪く、食事がのどを通らないようで日に日に痩せていく。「大丈夫か」と聞けば、いつもの笑顔で「大丈夫」と返す君をどうして僕は早く病院に連れていかなかったのだろう。

いまさらだ。
悔しくて、悔しくてたまらない。

病院に着いたとき、医者は「あと半年てす」と言った。君はあと半年でいなくなってしまう。
入院してから本当に食事ができなくなり点滴となった。呼吸ができなくなり人工呼吸器をつけた。それでも意識が朦朧とする中で君はいつもと同じ笑みをたたえたていた。

君が旅だった。

晴れた日に青い青い空へと登っていった。

小さな箱となった君。
寂ししい。悔しい。どんな言葉でも表し切れないほど、辛くて苦しい。君も僕と娘を残して旅立つことが悔しかったたろう。

タンスの中に君からの手紙を見つけた。
僕と娘への愛が溢れ、僕たちの幸せな未来を願う手紙だった。

僕たちも君を「愛しています。」
世界にひとつだけの、僕たちから君に贈る大切な大切な言葉。
これからもずっと君に贈り続けよう。

9/9/2024, 10:19:07 PM