〘小さな勇気〙
「おまえって、ぶっちゃけ斎藤と付き合ってるわけ?」
「ぶっ」
飲んでいたコーヒーに蒸せる。それは青天の霹靂、あるいは寝耳に水、こないだ親に『実はサンタクロースはこの世に存在しないのよ』と告白されたとき並みの衝撃であった。
「お、おまっ、いきなり勉強会するとか言い出すから何企んでるのかと思えば……コホ、コホ…」
「あ、ごめん。いきなり切り込みすぎた。それとも純粋無垢な優梨ちゃんにはまだ早かったかな?」
「…誰がおこちゃまだって?」
「だからそういうとこだろ。」
「なんだと〜。」
ほらほら角が隠しきれてない、そう言いながらも、机を拭いてくれるのは高橋樹。私、田中優梨の所謂・腐れ縁というやつだ。悪友とも言う、こちらが振り回されているだけな気もするが。
「で、実際は?」
きっと樹は最近噂になってるから気をつけろって言いたいんだと思う。けど
「付きあってないよ。」
本当に付きあっていない。ただ情報交換してるだけ。利害関係の一致に過ぎないのだ。
「最近、ほら部活の予定が詰まってたりするから部長・副部長どうし調整の話してるってだけ。」
嘘。
「ほんとか?」
「うん。」
不自然な笑いになったかもしれない。でも、絶対樹にだけは知られたくない。そのまま参考書を開いて文に目も通すふりをする。
「なら、いいよな。」
「え、」
いつの間にか天井が視界に入って樹の息が近かった。
1/28/2025, 7:00:51 AM