左様なら

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よく覚えています。あの日、空は花曇りでした。浮かぶ雲は足早に流れて行き、嗚呼今日は風が強いのだなと思っていました。
そんな空を見上げるばかりの私を、君はいつまでも見守っていてくれましたね。「ちゃんと前見て歩きな」と、優しく手を握ってくれていました。でもそのくせ、数歩先を行く足は止めません。手を引いて歩く君と、ついて行く私。私達の距離はずっと縮まらないままでした。
本当はあの時、いつもの様に隣を歩いてほしかったのです。先にいかないでほしかったのです。あの日々の様に、ずっと隣で同じ花を眺めていてほしかったのです。そうだったのなら、私は涙が溢れないように空を見上げ続けなくて良かったのですから。
嗚呼、今だって未練がましく、時折思いを馳せてしまいます。あの日、あの瞬間。私が強く願っていた事を。けれどその願いは叶いません。永遠に、ずっと。
今日も強い風が吹きます。今日も花は散って、何処かへとバラバラに飛ばされて行くのでしょう。

2/16/2025, 9:41:54 PM