NoName

Open App

子供の頃は楽しかった。

春は野原を走った。毎日毎日、よくもまぁ飽きずにやったものだ。つくしやたんぽぽ、桜。蝶々、鉢。暖かな春の風。兎に角心地好かった。

夏はまず梅雨が来た。梅雨が来ると野原を走れない。だけど、梅雨には梅雨の楽しさがあった。傘に雨粒が当たる音、水溜まりと靴がぶつかる音。。蛙に蝸牛。梅雨がシーズン真っ盛りの紫陽花。雨音が好きだった。

夏が本番になった。夏といえば夏休み。クラスの皆とは少しお別れ。沢山持ち物があって大変だった。
夏はおばあちゃん家に遊びに行く。おばあちゃん家には畑があって、季節に合ったものを植えるので、毎年スイカをくれた。おばあちゃん家はうちより更に田舎だったから、カブト虫もクワガタも、セミも。沢山虫が居た。夜中におじいちゃん、お父さん、お兄ちゃん、俺で懐中電灯構えて虫取りに行くのが楽しみだった。

秋は少し寒くなって、山も色付いた。どうやらイチョウが沢山生えているらしくて、銀杏の匂いが少し臭かったけど綺麗で好きだった。
秋は毎年ストーブの上で焼き芋を焼いて食べた。お母さんに「どのくらいで焼ける?」と何度も聞いた。平和な秋が、好きだった。

冬は本格的に寒くなって、雪かきをしたり雪だるまを作ったり、ソリで山から滑ったりした。怖がる僕をお姉ちゃんが無理矢理乗せて滑ったソリが俺の初めてだったけど、凄く楽しかった。山の前にあるデカイ公園には、沢山雪像が作られた。夜の石像は蝋燭が置かれていて綺麗だった。寒いけど凄く楽しかった。

楽しかったな、何も考えず、ただただ駆け回るのは。
楽しかったな。

「子供の頃は」

6/23/2023, 3:53:27 PM