鈍と錫

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 ひとり、舞台の上。観客はいない。僕だけの、僕のための、ちっぽけで静かな演劇場。息ができない程詰まらせてしまったものを吐き出せ。胸の中に巣食う憤りを叫べ。この僕だけの舞台で、演じ、歌い、舞え。踏みつけるように地に足つけて、歓声を浴びるように両手を広げ、言の葉に想いを乗せて。誰よりも自由に、何よりも鮮やかに。この舞台は喜劇だ。だから泣かない。だってここには僕しかいない。僕しか入れない秘密の場所。誰にも邪魔されはしない。邪魔なんてさせてやるものか。
 僕の舞台は紙の上。広げる手に握るのはペンや筆。また今日も、舞台の幕が上がる。ここにいるときは自由になれる。自由でいられる。僕の台詞は線になって、僕の振りは色になる。
 僕だけの、僕のための演目をここに。

3/17/2024, 4:29:48 PM