足音
私の彼は猫のように足音を立てない。
そしてそれは、彼の家族も同じだということを今日知った。
紹介されたお父さんお姉さん弟さんは、彼そっくりのアーモンド型の瞳に薄茶色の猫っ毛、みんな家の中を音もなく歩く。
これってどういうこと?もしや彼って本当は猫?
ううん、そんな想像はあんまり馬鹿げてる。
もっと現実的に……そう、ご両親の出身地は確か忍者で有名な所。
お仕事はコンサルか何かで、でも深夜に出掛けることも多いと言ってた。
もしかして彼の一家は忍者の末裔?だからあんなに足音を忍ばせて歩くの?
『……どっちもハズレ』
彼の心の声である。
真相は昔住んでいたマンションの床が薄く、足音云々で下階の住民とトラブルになったから。
家族全員静かに歩くのが癖になり、それが引っ越した後も今も続いている。
しかし、思ったことが全部顔に出てしまう想像力豊かな彼女を、彼はこよなく愛しているので、ずっと微笑ましく見つめている。
8/19/2025, 1:33:23 AM