【美しい】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
1/16 PM 0:10
「みんなに質問があります」
学食の席に着くと、
古結(こゆい)がそう切り出した。
「……何よ、改まって」
「『美しいもの』ってなんだと思う?」
「……美しいもの」
宵が促し、古結が答えて、真夜(よる)が
復唱する。いつもながら、連携プレーの
ように鮮やかだ。
「あのね、今朝見た占いのラッキーアイテムが
『美しいもの』だったの。
でも、美しいの基準って人それぞれなんじゃ
ないかなぁって思って。
そんなふわっとしたものをラッキーアイテム
です! って言われても困っちゃう」
「なるほどな」
「だからみんなにとっての『美しいもの』は
何かな~って聞いてみたくなって。
はい、天明(てんめい)くん」
「俺からか。――中村俊輔のフリーキック」
「おお~、さすがサッカー部。次は宵ちゃん」
「急に言われても……――猫の瞳?」
「あ~、不思議だし綺麗だよね。真夜くんは?」
「宵」
「うん、わたしも揺るぎなくそう思ってるけど、
そこをなんとか今回は宵ちゃん以外で」
一瞬、宵が何か言いかけたが、
結局口を噤んだ。
多分、言うだけ無駄だと思ったんだろう。
「…………。……推理小説」
「つまり、ロジックが美しいっていうこと?
すごく真夜くんらしいねぇ」
「……それで? 暁はなんなの?」
「宵ちゃん」
「ツッコミ待ちか?」
「……宵以外だと?」
「ショートケーキの断面!」
にこやかに古結が断言する。
本当に、『美しい』の基準は人それぞれで、
あまりにも範囲が広い。
(……俺も一回、『宵』って答え、
挟めば良かったのか?)
なんとなく、古結だけは
とても喜びそうな気がした。
1/17/2023, 6:20:54 AM