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ラブレターを書いた。
中学3年の春。ずっと片思いしていた女子に。
僕はいつも通り早く、家を出て学校を目指した。部活動にも入らず、ましてやクラス委員でもない自分がこんなに朝早くに家を出ることを母親は不思議がっていたが、なんとか誤魔化せた。いや、母親のことだ、もしかしたら気づいていたのかもしれない。
こんな朝早くに学校に来ることなんてなかったから、生徒で溢れかえっていない昇降口というのは新鮮だった。僕は彼女の上履きが入っている場所を探した。棚の側面にピタリと立てかけて、正面からは見えない位置にセットした。安直ではあるが、映像作品ではよくある、下駄箱に入れておくという手法だ。もしかしたら僕以外の人が登校してきて後ろでこの様子を見られているのでは。そう考えて指先が震えていたと思う。
彼女はクラスの人気者というわけではないが、特別一人で浮いているというわけでもなかった。
誰にでも当たり障りなく接し、だからといって、群れているわけでもない。容姿は綺麗な方だと思う。恋愛経験がない僕にとって、当時の気持ちは今思えば興味に近かったのかもしれない。
教室に向かうときも静かだった。普段、生徒同士の会話や、職員室から漏れ出る先生たちの声、そういう物があまり聞こえない。その静けさが僕の心を落ち着かせた。
教室について席に着いた時、早起きの代償である眠気が襲った。誰もいないこの空間で、僕は机に突っ伏した。直にほかの生徒が来て騒がしくなるだろう。
僕は、覚めないようにと願って眠りについた。



お題:夢が覚める前に

3/21/2026, 1:11:12 AM