リル

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君を照らす月

 夜道を歩き続けて、ようやく辿り着いた。道中、車が故障してしまったときは焦ったが、なんとか屋敷に着いた。
 自分だけの新しい城だと思うと、胸が高鳴る。必死に稼いだ金を自分の好きなことに使えるのだ。興奮して何が悪い。という感じに、誰もいないのにぶつぶつと独り言を言うのも悪くない。
 さあ、前触れはこんな感じで良いとして、中に入ろう。しかし、広い屋敷だなと感心してしまいそうだ。だが、何かが出そうな雰囲気だ。何かと幽霊が苦手なのに、なぜこんな広い屋敷に一人で来ようなんて思ったのだ。と、文句を言い、一つ一つ部屋を見て回った。
「あ。」
 ある部屋の扉を開けた途端、椅子が勝手に動いた。全身に鳥肌が立った。急いで扉を思いっきり閉めた。ありきたりすぎる仕掛けに思わず笑ってしまう。
「そんなわけ…ないよな。うん。ないはず。ハハハ。」
 冷や汗をかき、確認のためにもう一度扉を開けてみた。すると、長い黒髪の女性がいた。これはもう、はっきりしすぎている…。
「ギャー!」
 と、大声で叫ぼうとした。が、幽霊が人差し指を口に当てて、「静かに」とジェスチャーをしたので、叫ぶに叫べなかった。
 幽霊が手でこっちに来い、と呼ぶので恐る恐る幽霊の隣に行った。窓の外には大きな三日月が見えた。どこの部屋から見ても、ここまで大きな月は見えなかった。この部屋だけ、こんなに大きく見えるのかと感心してしまった。
 ふと、幽霊の方に視線を向けると、とても美しく、触ったら壊れてしまいそうな肌で、月を見ていた。月の光が差し込んでいるからか、まるで人間のようだった。

11/16/2025, 10:47:08 PM