海へ
彩りのない私の日々は、夏休みに入っても変わる事がなかった。
仕事に追われる毎日。
時計に目をやると午後の八時を指していて、それを意識すると一気に疲れが増した。
「せっかくの夏なのになあ。」
そういえば私この夏休み何もしてないかも、なんて急に寂しくなったりして。
ふと夏を感じたくなった私は海へと車を走らせた。
外はすでに暗く、クーラーの効いた涼しい部屋に慣れてしまった私にとって、少しジメジメとしている様に感じた。
家を出て二十分くらいたっただろうか。
海につき、私は近くのコンビニに車を停めた。
風が涼しい、海の音が聞こえる。
この海を見るだけで、この音を聴くだけで今までの夏が蘇ってきた気がした。
足元を見ると、月明かりに照らされキラキラと輝く一つの貝殻を見つけた。
私はそれを拾い、ハンカチで優しく包み込む様に鞄にしまった。そして、残りの時間夏を堪能した。
家に帰り、窓辺に先ほどの貝殻を置いてみた。
部屋には光が少ないため、海の時の様に輝いてはいなかった。
明日が来ると、また彩りのない退屈な毎日が始まるのだろう。
でも、貝殻の周りだけは優しい色で照らされている気がした。
部屋に夏がある、それだけで明日を頑張ろうと思える。
私の夏はまだ始まったばかりなのかもしれない。
8/24/2024, 4:35:21 AM