月凪あゆむ

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ただひとりの君へ

 それは、とある学校の、放課後の職員室にて。
「ちょっと! 見てくださいよこれ」
「ん~?」
「なんですか?」
 三年1組の担任の女性が、頭を抱えていた。
「あんの、問題児が~!」
 なんだなんだと、周りの職員も「それ」を見て。
「うわぁ……」
「また、ですか……」
「今日の、作文ですよね? 確かお題はこのページからとってて」
「そう」
 担任は、教科書の1文から、作文のお題をだした。それがこうだ。

「ただひとりの君へ」

「忠仁、理乃、喜美枝へ」

お分かりだろうか。
「ただひと、りの、きみえへ」
へと変換されていたのだ。
 しかも、その名前は実在していて、作者の数ある友人たちを指す。
 その下に続くのは、やたら大袈裟な友らへの感謝。
 友情自体は良い。だが、これでは作文などではなく、ただの「お手紙」だ。

「このやり方、今回で四度目よ? 信じらんない! これで、テストではなんで満点になれるの!?」

 今日も今日とて、担任教師は頭を悩ませている。

1/20/2025, 3:39:26 AM