「ハッピーバースデートゥーユー」
「ハッピーバースデートゥーユー」
「ハッピーバースデーディア·····」
「嬉しいね。覚えててくれたんだ」
「なぁに言ってんだぁ。毎年プレゼントちょうだいってガキみてえにねだってたのは誰だい」
「誰だっけな」
「·····」
「アンタ優しいから毎年なんかくれたよな。三年前なんか·····」
「不法侵入で逮捕してもいいんだよぉ?」
「しないでしょ、アンタは」
「·····何しに来たんだよ」
「プレゼント貰いに」
「今年は用意してねえよ」
「いいよ。もう貰ったから」
「あぁ?」
「歌ってくれただろ。俺のために」
「別におめえのためじゃ·····」
「今日この日にアンタがハッピーバースデーを歌う相手が俺以外にいるの?」
「·····」
「毎年今日だけは俺のために空けてくれてたよな」
「勝手にいなくなった癖に」
「うん。でも会いに来た」
「もうおめえに渡せるものはなんにもねえよ」
「嘘だ。毎年アンタ、今日だけは俺だけのアンタになってくれてたじゃん」
「·····」
「夜が明けたら帰るよ」
「·····帰る、か。もう〝そっち〟が帰る場所になっちまったんだなぁ」
「·····ごめん」
「謝るこたぁねえよ」
「なぁ」
「んー?」
「やっぱりちゃんと言って欲しい。アンタの声で聞きたい」
「·····」
「ダメ?」
「誕生日おめでとう、×××」
「·····ありがと」
END
「二人だけの。」
7/15/2025, 3:11:01 PM