「ねぇ、奥さんお聞きになって?森には魔女が出るんですって。」
「あらまぁ、本当ですの?魔女だなんておとぎ話にしかいないと思ってましたわ。」
ひそひそと噂されている、森の魔女の噂。
この世界に魔法というものは無い。それなのに魔女、と呼んでいるのはなぜだろうか。
忌み嫌っているのだろうか。女が森にひとりで住むことに異常さを感じたからだろうか。
どんな理由にせよ人を魔女と呼ぶのは気が引ける。
だからといって''森に住んでいる女''と呼ぶには長すぎる。
だから魔女なんだろうか。
時々彼女は森からでて市場へ行くと聞く。
ほうきに乗って行くだとか、使い魔に乗って行くだとか、羽を生やして飛ぶんだとか、噂は色々ある。
だがどれも信ぴょう性に欠ける噂ばかりだ。
市場に行くにはこの場所を通るだろう。
いつの日か1目見れたらいいが。
1目見る、と言うより話してみたいのかもしれない。彼女と。
彼女はどんな価値観で、どんな声で、どんな性格なのか。
気になるのだ。どうしようもなく。
だから、いつか話したいと思っている。
『この場所で』
2/11/2024, 9:13:34 PM