無音

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【256,お題:誰よりも、ずっと】

はじめての出会いは、とうめいなカベのむこうから君がのぞいてくれたんだよね

急にかかえられてビックリして、君のうででおもらししちゃったのは今でもハンセイしてるよ...

君は毎日ぼくのへやの前にやってきて、ぼくのおせわをするお姉さんになにかを言っては
ぼくをだきあげて、まんぞくしたら帰る。みたいなことをずっとやっていたね

ぼくも君がきてくれるのがちょっぴり楽しみだったんだ。
いつの間にかぼく、君のことがこんなにだいすきになってた!

その日は、はじめて君がほかのだれかといっしょにきた日
その日もぼくは同じようにだきあげられて、すっぽり君のうでにおさまった

君のおなかみたいなとこからいつも聞こえる、ドクドクした音がその日はいつもよりはやかったね
君といっしょに来たおおきな人たちは、ぼくのお姉さんといっしょになってなにかを話してた。

何がおこったのかよくわからないけど、その日のうちにぼくはおひっこしをすることになったみたいだ
新しいお家はぜんぶがおおきくて、ぼくは怖がりだから"おしいれ"ってところにかくれて君を困らせたね。ごめんね

でも新しいお家はけっこういごこちがよくって、毎日がたのしい!
何より誰よりもだいすきな君と、ずっといっしょにいれるなんて
うれしくってうれしくって、毎日君をおっかけまわして泣かれちゃったなぁ
ぼくってけっこう"ブキヨー"だから、たまにやりすぎっちゃって君を困らせちゃうんだ...ごめんなさい...

君は大きくなるといろんな所に行かなくちゃいけないらしかった
君がチューガッコー?っていうところに行くときはすごくタイクツだったなぁ...
なにをしに行ってるんだろう?狩り?でもたしか君は狩りが下手だよね...?
仕方がないから君が帰ってきたときは、ボクのおやつを少しあげるね

どうやら僕は君よりずっと早く歳をとるらしかった、その事に気付いたのは
君がコーコーセーになった時で、どんどん大きくなる君に比べて僕は
あの頃みたいなはしゃぎ方は出来なくなっていた、まあまだ全然元気だけどねっ!
でも君がよく付けてる匂いのするすぷれー、あれはちょっとキツいかもなぁ...

君が他の誰かと暮らすことを伝えにきた日、知らない大きな人が君といっしょにいて
びっくりしたのと、君を取られたくなくて吠えちゃったけど、あの人が嫌いな訳じゃないんだよ
君が幸せになってくれるならそれでいいんだよ、君がその人と家から出ていくとき
あの日よりも大きな手で僕の頭を撫でてくれたよね、きっともうお別れの時がすぐそこまで来てるんだ

でも僕は、最後に君に会えたから。幸せだよ


君の声がするなぁ、懐かしい...あの頃みたいな高い声じゃないけど、落ち着いてて
でもあの頃と全く変わらない、僕のことを思ってくれてる...優しい優しい声だ...

『レオっ!レオ苦しいのっ?!レオ...!』

なんでそんなに泣いているの...?...ああ、もうお別れなんだね
...今までありがとう、最後に会えたと思ったのに、最後の最後まで君は僕を心配してくれる
誰よりも、ずっと君のことを見ていた僕だから分かるよ

『レオ...ッ、!...行かないで...』

君はこれからも幸せになり続けてね...!僕のこと...忘れないでね!

また新しい誰かに、僕みたいな幸福の名前を付けてあげて

title.名前はレオ

4/9/2024, 1:20:00 PM