僕がいるのは、霧と光が分かれる場所、の光の部分。
それはまるで境界線のように、何かを分けていたんだと思う。
どうしてか、僕はそこにとどまった。
数秒もしないうちに、誰かが、霧の中から、僕に近づいてくるようだった。
だんだんと、シルエットが浮き出てきて、僕は気づいた。
随分前に亡くなった彼女だと。
はっきりしない姿で、僕の前に現れた彼女は、こちらに手を伸ばしてきた。
その手もまた、分厚い霧に阻まれて、ぼんやりとしか見えはしない。
僕はふと、懐かしさに駆られ、欲望に負けた。
声を出さず、彼女の手に自分の手を伸ばした。
彼女は少し、優しく僕の手をとったようだった。
握られた手から伝わるのは、優しい感触ではなく、ゴツゴツとした、細い骨の感触だった。
そう認識して数秒、彼女と繋いでいる手から突然、思いっきり鉄のハンマーで殴られたような激痛が走った。
僕が自分の手を引っ張ると、彼女は驚くほど簡単に離してくれた。
手を見ると、何かに噛まれたような形がついていて、全体に血が広がっている。
彼女の方を見ると、今度は僕を求めているように、手招きしていた。
僕が彼女を認識して、それでも動かないのを見ると、彼女は少し手を振って、霧の向こうに消えていった。
光と霧の狭間で
10/19/2025, 1:35:03 AM