〖遊べて良かった〗
祐「ねぇ、今日は一緒に遊ぼう。」
「…ウン、いいよ。何時からにする?」
祐「いつもの場所で、4時にしよう。」
「分かった。」
そうやって祐(ゆう)と放課後に約束をした。
俺はいつもの公園で少し早い時間に待っていた。
「草すごいな……」
二ヶ月前に来た時にはくるぶしくらいだったのに、今は膝まで伸びている。それと、昨日雨が降ったからか地面がぐちゃぐちゃと言っている。お気に入りの靴はいつの間にか泥まみれだった。
まぁこんな事は日常茶飯事なので放っておく。
「もうすぐ4時じゃん。」
持っていたスマホで時刻を確認すると、画面には3時57分と表示されていた。早とちりな俺は時間をチラチラと気にして、ゲームをしながら祐が来るのを待っていた。
「まだかなぁ〜」
ベンチに座って待っていると、後ろから肩を叩かれる。
振り返ると、そこには呼吸を乱している祐がいた。
「ちょっと…さぁ、毎回着くの早くない?」
「そういう性格だからしゃーないしゃーない。」
「僕が遅れたみたいじゃないか。」
「気にすんなってよぉ〜」
祐の細い背中をバシバシと強めに叩いたら、「…君、やっぱりゴリラだろ……」と笑われた。なんかムカついたから肩にデコピン食らわしといた。
それから祐とめちゃくちゃ遊んだ。
二ヶ月ぶりに遊んだからか分からないけどめちゃくちゃ楽しかったし、今まで悩んでいたもの全てを忘れることができてスッキリした。
…だから、帰るのが惜しくなった。
「もう、帰るのか?」
「うん。そうしないと怒られる。」
「…そっか。」
祐の家はルールが厳しい。
門限も大分早く、祐とは部活が無い日にしか遊べない。
「僕、今日とても楽しかったよ。」
「俺も…久しぶりに祐と遊べてさ。…めっちゃ楽しかった。」
「一時間だったけど、君と遊べて良かったよ。最高に楽しかった。本当に、ありがとう。」
「な、なんだよ…」
「じゃあね。」
祐はそういって俺の手を力強く握りしめ、逃げるように帰っていってしまった。祐が帰る時にあんな事を言うのは初めてだった。
なぜか分からないけど彼が帰るのを止めなきゃいけない気がした。でもどうしてか足が動かない。
「ああ…おう。じゃあね。」
結局俺は何もせずただただ、彼の後ろ姿を終始眺めているだけだった。
翌日、祐は自宅のマンションから飛び降りて死んでしまった。
自殺だった。
遺言書には一言、「疲れた」と書いてあったらしい。
#世界の終わりに君と
#僕の世界が終わる時に
6/7/2023, 11:57:01 AM