浜辺 渚

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「ねえ、あれって虹じゃない?」と彼女は指をさしながら言った。
「そうだね、恐らく虹だ」と僕は言った。
遠くにうっすらと、7色の湾曲した空気の柱がかかっていた。
「虹ってあんなに綺麗だけど、手で掴んだり、よじ登ったりってできないのよね」
「そうだね。あれは空気中に漂う水の粒に光が屈折したり、反射したりしてるだけだからね」
「なんだか、不思議よね。私たちは小さい頃から、虹に関してはかなり具体的なイメージを持たされてきた。けど、その実情はただの光の手違いだなんて」
「虹だけじゃないさ。この世界の光と色の関係は大体があやふやで、漠然としているんだ。でも、だからこそ自然で作り上げられる色彩には理屈があって、論理がある。それって素敵じゃないか?」
「あなたってわりにロマンチストよね」
「僕がって言うよりは、この世界がロマンに溢れているんだよ」

2/22/2025, 6:52:23 PM