紅黒零茜

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「1つだけ」

なぁ頼まれてくれないか?
「何をさ?」
今まで散々っぱらコキ使って来たけど、最後に1つだけ。な?頼むよ
「いや、何言われようがこっちは断れねぇからなんでもやるけど」
……それが、お前の手を汚す事だとしてもか?
「おっと、風向きが変わったな?急にどうしたんだよ。今までこっちにギャグみたいな事しかやらせなかった、お前らしくもない」
実はな……俺、好きなやつが出来たんだ
「……は?ただの惚気なら殴るぞ」
いやいや、違うんだって。落ち着けよ
「至って落ち着いとるわ。んで?続きは?」
おう、それでな……その好きなやつが、誰かに脅されてるらしいんだよ
「ふむ?」
そいつの希望を叶えないと、存在意義がなくなるだとか、そんなことをよく言っててな……そこで!だ!
「その脅してるやつを殺せって話?」
そうそう、話がはやいねぇ
「……一応聞くが」
ん?なに?
「その好きなやつってのは、まさか【こっち】のやつの事か?」
……そうだけど
「だとしたら、こっちには出来ないな。物理的にその願いは叶えられん」
あ〜お前でもやっぱ無理かぁぁ〜
「無理に決まってるだろ、こっちは人間様に対して誰のどんな願いであろうとも、危害を加えられないようになってるんだからな」
じゃあ……お前が俺だけのものになるって言うのは?
「………………」
俺の全部、輪廻の先までお前にくれてやるから。俺だけの願いを叶える悪魔になってくれよ
「……終身雇用のお誘いか?」
そう、他の人間の願いなんか叶えないでくれよ
いつも他のやつの話を聞くたびに、嫉妬に狂いそうだったんだ
「じゃあ、こっちからも1つだけ。いいか?」
なんだ?くれぐれも断ってくれるなよ……しばらくしょぼくれる自信しかない

「その話、もう100回は聞いてるよばーか」

4/3/2024, 1:32:17 PM