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『君と一緒に』

 隣にいるのに遠かった。君が何を考えているのかが分からなくて、紡ぐ言葉の裏の意味ばかりを探していた。そんなんだから、君の"ほんとう"にさえ気が付けないんだね。
 一緒に居てくれるだけで満足していれば良かったのに、欲深くて愚かで傲慢な僕は、それ以上を求めていた。僕は四六時中君のことで頭がいっぱいなのだから、君も同じくらい僕に溺れてほしいと。
 目に見えるものだけがすべてじゃないと、果たして本当の意味で分かっていたときはあっただろうか?分かりやすい印を欲しがって、確認できる安心ばかりを求めた。君が疲れてしまうのも当然だったのかもしれない。
 君と一緒に過ごした日々の、優しくて美しい尊さに、僕は終ぞ気が付かなかった。失われた後にその価値を知って、後悔ばかりしている僕の、あまりに愚かな醜態を笑ってくれ。そうすりゃ、僕だっていくらか救われるかもしれないから。この期に及んで自分のことばかりの僕の卑しさには、どうか見ないフリをしておくれよ。

1/6/2024, 3:05:05 PM