世界は貴方だった。全ては貴方だった。それを思い出すのに、随分時間がかかってしまったような気がする。
始めは囁きで、時には形を持って私を慰める。誰、と顔を上げると消えてしまう。だからずっと気の所為だと思っていた。誰かに愛されたい、その願いが映し出す幻。
私はアイスコーヒーの、純度の高い氷の中に、その答えを見つけた。愛されたかった。その願いを叶えていたのはいつも、私だった。氷が溶ける。プリズムが光る。
ずっとそこにいたんでしょ?
氷が溶ける。水と交わる。貴方はいつも物の姿を借りている。氷が溶ける。氷は言う。貴方のこの世界が、少しでも天国に近づくようにと思ったから。
透明を通して世界を見ている。
氷はやがて完全な水となって、静かに私の中に溶けた。
8/25/2024, 12:58:58 PM