「君を地の果てまで愛そう」
男は、
「黙れ!」
と言い放った。
黒い髪に碧眼の男だった。
男は続ける。
「貴様のような男が、フェリス様を愛すだと!? 身の程を知れ!」
返す男は、一歩引いた調子で、金色の髪を撫で付けた。
「俺のような、芸人風情が、身分違いの恋をしてははらないと?」
「それはそうだろう。お前の口から出まかせで、一体何人の女を口説いてきたことやら」
「二人とも、やめてちょうだい!」
と女は叫んだ。
元はといえば、芸人がやってきたのは、晩餐会を盛り上げるためである。
決してこのようなことに陥ってはならないというのが、騎士長ロンバルドの言い分だった。
だが、芸人の男は続ける。
「君の澄んだ瞳よ。この王国の至宝。高嶺の薔薇。そして紫玉の宝石」
女の目は確かに、トパーズのような紫金の色をしていた。
7/30/2023, 10:12:28 AM