ほろ

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多分、好きなんだと思う。
俺の告白に、新しい仕事先の先輩は眉根を寄せた。
「え……それ、例の子の話?」

校舎裏のゴミ捨て場。そんな場所で会うようになって約二年。相手の名前も知らない。知っているのは、友達がいないことと、バスケ部だってこと。学生相手に何言ってんだって話だけど、気付いたらっていう面倒な感情。世間では恋だなんて呼ぶらしいが、そんな可愛らしい感情ではないと思う。

先輩は、ビールをぐ、とあおる。
「まー、お前が気持ち悪いのは最初からだけどさぁ……」
「気持ち悪いってなんスか」
「だって、この仕事の応募理由あれだろ。その子と暮らすための部屋を借りたくて金がいる、だろ?」
「…………」
「用務員の給料だけじゃ足りないからって。なんかさぁ……見てて可哀想になってくるわ」
はは、と乾いた笑いを返す。
先輩はまたビールを流すと、俺の手元に一万円札を置いた。
「そういうお前だから、奢るんだけどな。ま、頑張れよ」
「あ、あざす」

たとえこの感情が間違いだったとしても、彼女に笑っていてほしい気持ちは本物だから。
きっと、いい報告をします。先輩の背中に頭を下げながら、俺は唇を結んだ。

4/22/2024, 11:59:36 AM