『たとえ間違いだったとしても』
「あ゙ぁぁ……違う……違うぅ……すぅう……ふぅぅ」
六畳一間の一室、暗がりの中で頭を抱えてかがみ込んでいる男が呻く。
天井にぶら下がった白熱電球が、隙間風に揺られる度に男の影がチラチラとたなびいた。
「違うんだぁぁ……違うぅぅ……!!
どうしてぇ……?
なんでぇぇ……??」
『分からない、分からない』とブツブツ呟きながら、男は床に頭を打ち付け始めた。
ガスッ……ガスッ……ガスッ……ガスッ
鈍い音が連続する。
ガスッ……ガスッ……ガスッ……ガスッ…………
動きが止まって数瞬……男は急に頭を上げると鮮明な声音で、かつ流暢に話し始めた。
「レディース&ジェントルメン!!
皆様大変長らくお待たせ致しました、答え合わせのお時間で御座います!
それでは早速参りましょう……!」
両手を高く挙げ、満面の笑みを携えた男は高らかな声で宣言する。
「……とはいえ、実際のところ皆さん既にお分かりなんでしょう?
本当は分かっているくせに誰も口には出そうとしないんです!
……そうですよねぇ??
心の中の隅の隅、そんな辺鄙な場所まで追いやって……気付かないふりがお上手ですね!
いや〜、素晴らしいっ!!」
口早にそれだけ言った男は、再び頭を床へと打ち付け始める。
ガスッ
打ち付ける。
ガスッ……ガスッ
打ち付ける。
ガスッ……ガスッ……ガキョッ…………
あぁ、これはぁ……たぶん折れたな。
4/23/2023, 5:41:08 AM