『君を探して』
君が桜に攫われて8年が経った。
僕は今でも君を探している。
思い出の場所も、君の故郷も、いつか行ってみたいと話していた場所も、その全てに君はいなかった。
どこを探しても君は、僕の思い出の中にしか存在しなかった。
この春でついに9年目になる。
僕はもう大人になってしまった。
夜の公園で2人、大人になりたくないって泣いた日があったね。
ねぇ、大人になっちゃったよ。
あんなになりたくないって願ってた大人になっちゃった。
本当はもう分かってたんだ。
この世界のどこを探しても君はもういないって。
僕がどれだけ歳をとって大人になってしまっても、君は子供の、あの日のままなんだって。
それでも見ないふりしてた。
分からないふりをしてたんだ。
だって、認めてしまったら、君のいない世界を認めてしまったら、今度こそ本当に君が消えてしまうような気がしたんだ。
僕はね、君に逢いたいんだ。
だけれども行き方がわからないんだ。
どうすれば君に逢えるの?
生き方も、逝き方も、何もわからないんだ。
君のいない世界は、寂しいよ。
心にぽっかり穴が空いて、その空白は何をもってしても埋めることができないんだ。
つまらない大人になってしまった僕は君に嫌われちゃうかな。
僕はまだ君を探すことをやめられそうにないよ。
2025.03.14
23
3/14/2025, 1:18:17 PM