かたいなか

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「このアプリの文章投稿、意外と真夜中と20時21時頃と、正午付近に集中してる説」
ぶっちゃけアプリ入れてから1年と少ししか経ってねぇから、気のせいの可能性の方が大だが。
某所在住物書きは真夜中に書き終えていた文章を推敲し、結局削除しながらチョコを食べていた。
深夜テンションで書いた初稿はその大部分がカット。ほぼ全滅であった。

「かく言う俺も結構深夜テンションで書いて……」
深夜テンションで書いて、真夜中投稿してる。そう付け加えたくて己の過去投稿分をさかのぼるも、今年に入って昼投稿ばかりであることに気付き、
「寝て起きて『コレ違う』って大部分修正するわ」
ぽつり。己の深夜帯の文才を疑問視する。

――――――

真夜中は日中ほど、インスリンが働いてくれないので、夜食は潜在的に脂肪になりやすい。
そんな小ネタを観たような、実はデマなような、なんなやらを覚えている物書きです。
今回はこんなおはなしをご用意しました。

最近最近の都内某所、某アパートの一室、真夜中。
部屋の主を藤森といいまして、
小さなため息ひとつ吐いて、頬杖なんかついて、
どうやって侵入してきたとも分からない稲荷の子狐を、穏やかに見ておりました。
藤森はこの子狐のお得意様でした。子狐のお母さんが茶っ葉屋さんをしており、藤森はそのお店の大切なリピーターなのです。

「おとくいさん、再来週、たいへん」
物言う子狐はお尻と後ろ足でもって体を支え、
前足で器用にスープカップを持ち、
愛情と幸福でぽっこり膨れたおなかを、ピチャピチャ、ホットミルクで満たします。
「おとくいさんをイジメるひと、来週帰ってくる」
コン、コン。子狐は言い終えると、藤森が作ってくれたホットミルクに顔を戻しました。

「私の初恋のひとが、1ヶ月の新人研修旅行から来週の金曜日、帰ってくるハナシか」
あぁ。これは、おかわり要請コースだな。
コンコン子狐のミルクの減り具合を見て、藤森、おもむろに牛乳をぼっち鍋へ投入。
ジンジャーパウダーと、シナモンパウダーと、砂糖少々を振りまして、ひと煮立ち。
案の定、子狐コンコン、飲み終えたカップを両手で藤森に差し出しました。
「どこで聞いたんだ、子狐?お前にはそのこと、一度もひとつも、話していない筈だが?」

約10年前、初恋を経験した藤森。
この初恋さん、実は恋人厳選厨の理想押し付け厨、恋愛対象を自分のアクセサリー程度にしか思ってないタイプの執着強火さんでして、
藤森、1年で心をズッタズタに壊されたのです。
で、藤森から縁を切った筈だったのですが、執着強火な初恋さん、3月に中途採用として職場に入ってきまして。つまり藤森を追ってきたのです。
詳しくは前々回投稿分参照ですが、ぶっちゃけスワイプが面倒なので、気にしない、気にしない。

「キツネ、ぜんぶしってる。キツネうそいわない」
「そうか。で?」
「キツネわかる。おとくいさんをイジメるひと、あーなってこーなって、そーなって、泣いちゃう」
「すまないよく分からない」
「ここから先は、ベットリョーキンです」
「はぁ」
「ホットミルクとお揚げさん、モーシウケます」

「腹が減ったのか」
「ちがうもん。タクセンりょー、託宣料だもん」
「私の実家から、今年も根曲がり竹が届いている。お前の好きなホイル焼きなら、すぐ作れるが」
「たべる!タケノコ、たべる!」

ビタンビタンビタン!
まるでサーキュレーターか扇風機のように、コンコン子狐、尻尾を振り回します。
都内キロ単価3千5千オーバーの味を、なにより藤森の善き心魂を込めた料理の優しさを、コンコン子狐、ガッツリ学習済みなのです。
ビタンビタンビタン、びたんびたんびたん!
尻尾をバチクソ振り回す子狐に、藤森、2度目の小さなため息を吐いて、
雪国の実家から届いた段ボール箱から根曲がり竹を5本くらい、出してアルミホイルに包みます。

(結局、何故あのひとが帰ってくることを知っていたのか、子狐に聞けずじまいだった)
魚焼きグリルにホイルを並べて、スイッチオン。
真夜中の夜食の準備、もとい、捧げ物の用意です。
(そもそも「あーなってこーなって」「そーなって」「泣いちゃう」とは?)
藤森の背後でガサゴソ、音がするので振り返ると、
食いしん坊の子狐が段ボール箱に頭を突っ込み、コリコリ。タケノコをつまみ食いしておったとさ。

「おいしい。おいしい」
「……マヨネーズ、要るか」
「いる!」

5/18/2024, 4:58:38 AM