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視線の先には

何気ない日常が広がり、そんな日常を
美しい景色として纏う愛おしくて堪らない人。

「嗚呼、君は今日も美しいね、まるで女神だ。」なんて
伝えたい僕の言葉は、君には届かないだろうけど。

僕はどうにかして、俯く君に上を向いて欲しいのに
昔のように嬉しいと…幸せと、眩しいあの笑顔を。
僕の好きな夏の花、空に向かって咲く向日葵のように
顔を上げて笑って欲しいのに。

ふと、僕の願いを叶えるかのような風が吹く。
風が君の頬を撫でるように過ぎていく。

「!…今のは…でも、まさか……」

少しだけ君の顔が上がる。もう少し、もう少しなんだ
顔を上げて欲しい。僕を見てほしい。目を背けず前へと進んで欲しい。

願えば願うほど、風が柔らかく包み込む。
「あの出来事を、あの日の惨劇を忘れろなんて、そんな酷な事は言わない。僕というあの日の重りを抱えたまま、前へと進む糧として歩んで行って欲しい。」

今日この日に、僕が君の心に残した傷を、引き留めてる突っかかりを、気にしているものを取り払って逝くから

「君を前へ進ませられたら、僕の最後の願いだ」
大きくて、綺麗な色の瞳。やっと、見てくれたね。
「___ずっと、居てくれたの?」
言いたい事も聞きたい事も、色々あるだろうに。
それに当たり前の事、聞くまでもないのになぁ…
「勿論だよ。大好きで大切な君を、1人だけ此方に置いて遺して逝ってしまったからね。君が前へ進める日まで。でも、まさか君が生を諦めてしまうとは思わなくてね?止める為に、こうやって、最後に会っているんだよ。」
歓喜、驚愕、困惑、焦燥の感情が浮かぶ君の表情[カオ]
「さい、ご…?もう、側から、消えちゃうの…?」
曖昧に、隠すようにそれでも尚、表情に出るんだろう。
「…ごめんね、君が天寿を全うするその日までずっといる予定だったんだよ。君が、命を諦めなければ。」
嗚呼泣かないでくれ、僕の手で届くはずなのに拭えない君の瞳から流れる涙を見たくないんだ。

君を見つめ、想いを残す。目覚めても、忘れぬ様に。

「ねえ、次があったら、私達また、出逢えるよね?」
嗚呼、やはり、君はいつの世でも_____
「勿論。君の為に、君の側で生涯を終えたいからね」

___じゃぁ…これは約束ね?

今では絡む指の無い僕の手の辺りに触れ、君は微笑む。

「また…来世で逢いましょう?私は、見つかるその日まで永遠に貴方を探すわ。どんな手を使っても、必ず」

「…嗚呼、勿論。君を見つけるまで手を汚そうと探すよ。どんな姿の君でも、必ず探してみせるさ。」

_____隣に居なくても僕は君を想ってるから。

「…あぁもう、生きるしかないじゃないっ…!」

でももう、彼のおかげで心残りは無い。貴方の分まで、私は天寿を全うするまで生きるわ。

だからどうか、先に天国で貴方は待っていて。
死のうとした罪を償って、遅くに貴方の元へ逝くから

7/19/2023, 6:35:59 PM