題 ススキ
君は活発で、よく動く働きもんだ。
そのくせ礼儀正しく、近所のじじばば達によう好かれてる。そりゃあんな明るく挨拶されちゃ、好かれるのも頷けるってもんだ。
それに比べ俺はどうか、外に出るのは億劫だ、動くのだって面倒臭い。周囲の視線も煩わしい。
俺は小説家なもんで、だいたいが籠りっきりだ。
筆が行き詰まれば何か良い安を求め、縁側に腰を下ろす。やること、と言えばそれくらいだ。
そんな陰気な俺と君は、どういう巡り合わせか同棲している。かれこれもう、二年ほど続いている。
こんな俺とよく二年も続くと自分でも不思議なものだ。
まあしかし、それも終止符がうたれようとしているわけだが。
最近よく君の顔が曇っているのは知っているさ。
俺が近くに行くと笑おうと、笑顔をつくるんだ。でも素直な君だ、無理をしているのがすぐにわかる。
君の心を煩わせるようなことをしたかと、考えてみたらわんさかと出てくるもんで改めて己の不甲斐なさを認識させられた。
もともと、口数が少なく言葉が足りない俺だ。
女心もろくにわかりゃしない。君を不安にさせることもよくあっただろう。
もうちっと、君を支えられるよう今夜の月見でいつもよりも話すとしよう。
苦手な外出をして、ススキを採ってきたんだ、神様の依り代だなんて云われてる。
これを飾りゃ、案外臆病者な俺と君も昔みたいにうまく通じ合えるかも、なんてらしくないものに縋る俺の話しでも聞いてくれや。
11/10/2024, 11:39:57 AM