Largo giocoso

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『イルミネーション』


「綺麗だね〜」

「そうだね。」

「あ、あれ学生さんたちかな?
……ふふ、初々しくて可愛いね〜」

「ほんとだ。
…………ほんとに、綺麗。」

私たちは仕事帰り、駅前のイルミネーションを見ていた。

今年はいつもより少し早くライトアップされたと言うのに、イルミネーションを見に来ている人は意外と多かった。

にしても、この辺りで1番のイルミネーションと言われるだけあり、迫力がある。

徹夜続きで私たちは目の下には隈があり、髪の毛もボサボサ、肌も少し荒れてしまい、私たちはくすんでいた。
目の前に広がる人工の光とは正反対だった。

けれども、その人工の光に圧倒され、私はボーっと眺めていた。

「ふふ、レイちゃん、ほんと綺麗なもの好きだよね。」

「そう?」

まぁ、嫌いではない。
というか、好きだ。

私は図星を突かれ、そんなにわかりやすかったか。
と、少し焦った。


「うん。
…………そういえば、去年、私ここでフられたんだァ。」


「……前の彼氏さん?」


「うん。
頑張ってたのに。」


彼女は下を向いてしまった。

せっかく目の前には壮大なイルミネーション。
上を見たらポツポツと光っている綺麗な小さな星たち。

私は勿体ないと思い、彼女の手を握り、言った。


「今はひとりじゃないよ?
私がいる。」

「……!うん!そうだよね!」


彼女はパッと花が咲くように笑顔になった。

「よーし、明日も頑張るぞ!」

「そうだね。
ねぇ、よかったら今日泊まってく?」

「え、いいの?
なら帰りに焼肉買おー!あと、お酒!」

「ふふ、飲みすぎないでよ?
ミナ、直ぐにつぶれるんだから。」

「1杯だけだって〜」

私たちはお互いの顔を見合い、笑った。

その日のイルミネーションは今まで見た中で1番輝いて見えた。


けれども、私達も負けていない。
私たちは私たちなりに光っている。


私たちはお互いの冷たい手を温め合いながら近所のスーパーへ向かった。




12/14/2022, 11:03:50 AM