夢月夜

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『時を告げる』

何故こんな事になってしまったんだろう。
俺は何の力もないただの高校生だ。
普通に平凡な日常生活を送り、友達と普通に笑い合い、彼女欲しいなぁなんて夢見るだけの何処にでもいるありふれた人間。
なのに、こんな事誰が予想出来ただろうか。
かの有名なノストラダムスだって予言出来なかっただろう。
世界の命運が16歳の少年に委ねられるなんて。

「さぁ、選ばれし少年よ。どちらかのカードを引たまえ」

目の前の男は神様らしい。しかも人間に絶望した神様。だから神様はこの世界を滅ぼして人間を消し去り、新しく作り替えたいらしい。

端正な顔をして恐ろしいことを説明してくるから冷や汗が止まらなかったよ。

けれど、理不尽に滅ぼすのは人間も納得しないだろうと人間から代表を選び、滅びか生存のカードを選ばせる事になったようなんだけど……。

世界の命運がギャンブル状態って何。
それが神様の慈悲っておかしくないか?

タイムリミットが刻々と迫ってくる。
選ばない選択は生存のチャンスを必要としないとみなされ、滅びになってしまう。
俺は絶対にどちらかのカードを選ばなければならない。
生存か滅びかわからないまま。

緊張と恐怖で手が汗でべとべとだ。
自分の心臓の音がやけに煩く聞こえてくる。

チッ、チッ、チッ、チッ……

ボーン

時を告げる鐘が鳴り響いた。

もう待ってはもらえない。

俺は意を決して勢いよくカードを引いた。

恐る恐る表を向けた俺は目を大きく見開く。

最後に見たのは神様のほくそ笑む顔だった。




9/6/2024, 3:06:25 PM