ゆかぽんたす

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今日の放課後時間ある?話したいことあるんだけど。

そんなメールが送られてきた。相手は家が近所の幼馴染。家が近いけど、お互い部活の朝練があって顔を合わせるのはごくごくたまに。中学生の頃はもっといっぱい会ってたけど、なかなか今は難しい。それでも、同じ高校に進学できただけでも感謝しなくては。
何を隠そう、僕は彼女が好きだ。かれこれもう、7年くらい片思いをしている。高校生活も残り1年をきってしまった。そろそろ行動に移さないと。今度こそ彼女は遠いところへ行ってしまうかもしれない。

そんな、仄かな心の焦りを抱いている時に彼女からのメールを受信した。僕は約束通り放課後自分の教室で彼女を待つ。10分位経ってから、息を切らした彼女が教室へ飛び込んできた。
「ごめん!待った?」
「いや、全然」
こうして向き合って話すのが何週間かぶり。それだけでこっちは緊張をしてしまうというのに。彼女は僕の向かい側の椅子に座った。距離がとても近い。
「ねぇ、お兄ちゃん元気?」
「え?別に普通だけど」
僕には5つ年の離れた兄がいる。もう社会人になり東京で働いている兄は、幼いころは僕と彼女とよく一緒に遊んでくれた。とても面倒見が良い兄だ。彼女も慕って、今でもお兄ちゃんと呼んでいる。
「兄さんがどうかしたの?」
「その、あの」
なんだか彼女は口をもごもごさせている。目配せまでして、僕を見つめる目が、心なしか色っぽい。思わずごくり、と唾を飲み込んだ。
「この夏、帰ってきたりするのかなあ、って」
「え?あぁ、うん。夏休み取ったら帰省すると思うよ」
「ほんと?そしたらさ、私にも教えてほしいの」
「別に……いいけど?」
「ありがとう」
僕の返事に彼女はホッとした表情を見せた。なんだか、やな予感がする。
「もう、当たって砕けてやろーって思ってさ」
立ち上がると彼女はその場で伸びをした。
「告白しようと思うの。お兄ちゃんに」
はにかんだ顔で、彼女はそう言った。すごく可愛いと思った。瞳が澄んでいて綺麗だと思った。僕に向けられた笑顔であり瞳であるのに、僕によく似た兄を思い浮かべて笑っている。笑いそうになった。無論、勘違いした僕自身に。
彼女はじゃあ行くね、と言うとさっさと帰ってしまった。一緒に帰ろうとも言われない僕は、最初から眼中にないんだ。
「あはは」
ようやく笑いが出てきた。
乾いた虚しい笑い声が、誰も居ない教室で響いた。

7/31/2023, 2:25:11 AM