未知亜

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ㅤ今朝の予報では雨は降らないと言っていたけど、気温はあまり上がらずに、重い雲が垂れこめていた。そばのベンチに腰掛けてバスを待ちながら、僕は空を眺める。
ㅤ吹く風はまだ冷たくて肌寒さを感じた。迷った末に止めたほうのフーディを着てくれば良かった。
ㅤ最近の僕はいつもこんな感じだ。タッチの差でなにか逃したり、ふとしたことで迷ったり、少しだけタイミングがずれていく。世界がまるで色を失くして、どんよりとした曇りみたいだ。なんだか頭もぼんやりする。
ㅤ君と並んで歩いていた頃は、一緒に虹を見つけたり、吹く風の匂いに季節を探したり出来た。鮮やかだったあの世界を幸せと呼ぶんだって、長い時をかけて噛み締めている気がする。
ㅤバスがやってきた。痛む腰を持ち上げてポケットの小銭を探る。歩き出したところで、誰かに呼び止められる。
「お父さん、いた!」
「あれ……由美……?」
「バスに乗ったら駄目だって」
ㅤピンクのカーディガンが目に眩しい。
「一緒に……」
「はい?」
「季節を探してくれんかのう」
「はいはい、焼き芋ね。今日もちゃんと持ってきたから!」



『曇り』

3/23/2025, 11:38:06 AM