ガルシア

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 「雫」という一文字にはどこか清らかな印象を抱く。実際にはただの液体の滴りだというのに、不思議なものだ。雫と聞くと、月の光に照らされる水滴とか聖水の一滴だとか、そういう澄んだものを連想してしまう。色のついた液体だろうと雫は雫だというのに。
 音もなく、手にしたナイフの先から水滴が落ちて床を汚した。深く赤い色をしたこれもまた雫ではある。しかし神聖には思えない。或いは、神聖な人物から流れたものであれば清らかなものなのだろうか。
 膝を折り、床を僅かに濡らしたそれを指で拭って舐めた。鉄臭い。酸味、だろうか。なんとも形容し難い味をしている。先程切り裂いた女の匂いを思い出した。

4/21/2023, 12:05:51 PM