ベッドの傍らに、小さいながら袖机がある。
一番上の引き出しには、文箱やら雑記帳やら、身の回りのものが入れてあるが、二段目は手紙の束で溢れそうになっている。
丁寧に折りたたまれて封筒に入っているものもあれば、破きとったらくがき帳をなんとか四つ折りにしたものもある。ほかにも、松ぼっくり、シロツメクサの葉の押し花、ひまわりの種、小さくなった鉛筆なんてのもあった。
今日届いたのは、丁寧に折りたたまれてる部類の手紙だ。
ちょっと不思議な近況が、きれいな文字でつづられていた。
「あのね、今日ねー……」
楽しそうに話す声が今にも聞こえてくるようだ。
一番上の引き出しから、便箋とペンを取り出し、こちらも話しかけるように書き出す。
食事に何が出たとか、相部屋のだれだれがどうしたとか、それも特段なければ、思い出話くらいしか書くことはないけれど。
ずいぶんと薄くなった便箋の冊子に気づいたが、追加の購入を頼むのを躊躇っている。
「今日ねー……」の続きは、直接聞きたい。
『病室』
8/2/2024, 10:52:50 AM