サラダチキン

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東京に転校するって聞かされた時、やったー!より、どうしようって思ったの、今でも覚えてる。

あれだけこんなクソ田舎から抜け出して〜!って愚痴ってたのに、本当にそうなるってなったら考えるのは新しい学校のことでも急に知らされた父さんの再婚のことでもなくて、いま部活辞めたら人数的にヤバいんじゃないかとか、先輩に借りた5000円返してないとか、帰り道に君が独りになるじゃんとか、そんなことだった。

テストの点がどうとか顧問がウザイとか言い合いながら小石を蹴って。早く上京したいわ。なんて言ってたのにさ。ほんとうにそうなるってなったら、なんか急に今までつまんなかった全部が尊い何かに思えてきて、人間ってめっちゃゲンキンなんだなって他人事みたいに呆れた。
ほんとはさ、毎日毎日つまんないことばっかだって愚痴りながら歩く夕暮れも、そこまで嫌いじゃなかったんだ。

随分と馴染んだ帰り道。あれだけ似合わね〜とか思ってた制服も着崩せるくらいには慣れたし、学校帰りにコンビニ寄って買い食いするのもドキドキしなくなった。父さんの再婚相手さんのことはまだお母さんって呼べてないけど、多分、これもしばらくしたら呼べるようになってんだろうな。

あれだけ憧れてた東京は案外フツーだった。
都会は星が見えないとか言うけどそんなでもないし。
ここは田舎だから星が綺麗なんだぞとかセンセー達言ってたけどそんな変わんなかったもんな。アレぜってー田舎勤務の負け惜しみだろ。都会の空もフツーに綺麗じゃんって思ったもん。

そんでさ、星見てたらちょっと思ったんだわ。
この星って、君も見てたりしてんのかなって。

『君は今。』

2/26/2023, 11:09:01 PM