一森くま

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三月。
慌ただしく、気持ちの移り変わりが激しくなる
この季節が嫌いだ。

厳密にはホワイトデーを過ぎた辺りから
なんとなく心がせわしくなる。
年度末や確定申告の時期ということもあり雑務に追われだすのもあるのだろう。

終盤に近づいていくと
それまで当たり前のように顔を合わせていた得意先の人や
ある時楽しく談笑していた記憶のある人が
異動や退職で急に居なくなる。

人付き合いはそこまで得意ではないし
寧ろ一人静かに過ごしていたいけど
心を落ち着けて話せた人がひとり、また一人と居なくなるのは悲しい。
止める権利もないくせに
ずっと居てくれたらいいのに、と無責任に感情を心に溜め込む。


そんな私だって、四月から一人暮らしをする。
新しい部屋を借りて、新しい仕事に就いて
一人で暮らす予定だ。

荷造りをしていると、家族の
「ずっと居てくれたらいいのに」というような
気配やメッセージを受け取る。
いざそんな感情をもらうと、居なくなる側としては
とても窮屈で矛盾したような気持ちになる。
自分の為に行動することが誰かの心を傷つけているような。でも負けてはいけない。

日に日に、家族と過ごす時間は短くなっていく。
そこまで遠くに引っ越すわけでもないし
車で1時間もかければすぐに会えるけれど
きっと一人、新居で落ち着ける時間が来るまでは
ストップウォッチが押されているような感じだろう。

特に母との会話は一つ一つが重く感じる。
いつもなら流してしまうような会話も
二人してバカみたいに笑う。
涙が出るくらい、大げさに笑って
後になって楽しかった記憶を思い出したいみたいに。

舞い落ちるなごり雪は
ひと月もすれば桜に変わる。

春よ、来い。
変わりゆく皆と私のために。


3/23/2024, 6:50:10 AM