大二は私とデートに出かけている間、幾度となく周りをキョロキョロと見回す。
二人で歩いている時も、お店で買い物をしている時も、ご飯を食べている時も。
なぜそんなに周りを見ているのかはわからないが、私のことを見ている時間よりも周囲を見ている時間の方がよっぽど長くて、すこしヤキモチを妬いてしまいそうになる。
今も大二がどこかを向こうとしたので、ふとイタズラしたくなって頬を両手で挟んでこちらしか見えないようにした。
大二は驚いた顔をして、「ユリアさん?」と頭にクエスチョンマークを沢山浮かべている。
「どうしていつも周りを見ているの?
かわいい女の子でも見つけた?」
意地悪にそう聞くと、大二はまたキョトンとして、少し考えて、
「俺、そんなにキョロキョロしてた?」
と言った。
どうやら無自覚だったらしい。
「私と出かけたらいつも周りを見ているわ。
他の人がいる時はそんなことないのに……」
大二は私の手を頬からそっと離すと、また考える素振りをして、あっ、と小さく声を上げた。
「多分、怪しいヤツが周りにいないか、警戒しすぎてるんだと思う。
ほら、まだユリアさんのことを狙うやつは大勢いるから、心配で。ユリアさんには少しでも楽しくお出かけして欲しいからさ。
でもそれでユリアさんを不安にさせてたら意味無いね、気をつけるよ」
「……ふ、ふふ」
大二が私以外を見ているように見えて、存外私のことしか考えていなかったため、あんまりに可愛らしくて笑いが込み上げる。
「な、なんで笑ってるの?」
「大二のことが本当に好きだなって思ったの」
私がそう誤魔化せば、大二は「なんだそれ」と笑う。
私は自分で思うよりもっと幸せ者なのかもしれない。
7/18/2024, 3:21:39 PM