花とコトリ

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「大好きな君に」

三月の柔らかな光のなかで、君はいつだって僕の足元にいる。

07:30
「ごはんだよ」
袋を揺らす音に、君は世界で一番幸せなニュースを聞いたような顔をする。
器に落ちるドッグフードの、乾いた、けれど確かな音。
待ちきれなくて、君の前足がフローリングを「タカタカ」と小さく鳴らす。

15:00
黒い毛並みに指を沈めると、春の陽だまりの匂いがした。
「クロ」
名前を呼ぶと、君は首をかしげて僕をのぞき込み、濡れた鼻先を僕の手のひらにぐいっと押しつける。

君の瞳に映る僕は、君が思っているよりもずっと不完全で。
それでも、お腹を見せて無防備に眠る君の姿を見ていると、僕の心も少しだけ透き通るような気がするんだ。


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「大好きな君に」(クロの視点から)

06:00
まぶたをひらくと、大好きな人の匂いがした。
まだ夢のなかにいるあの人の、規則正しい呼吸の音。
僕はそっと、布団から出ているその手首に、冷たい鼻先を押しあててみる。

07:30
「ごはんだよ」
あの人が袋を揺らす。魔法の合図だ。
カサカサ、カラカラ。
器に落ちるドッグフードの音を聞きながら、僕は嬉しくて、足にうまく力が入らなくなる。
しっぽが勝手に、床をパタパタと叩いてしまうんだ。

15:00
あの人はときどき、少しだけ寂しそうな顔をして僕を見る。
そんなときは、わざと力いっぱい体を寄せて、あごを膝に乗せてみる。
「クロ」
名前を呼ぶ声が、僕の黒い毛並みに溶けていく。

あの人が笑ってくれるなら、僕は何度でも、この春の陽だまりのなかで踊ってみせるよ。


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3/4/2026, 1:38:11 PM